―葬儀業界の中で活躍し始めた布川さん。プライベートでは離婚、そして仕事上では独立開業という大きな決断をします。
「当時、様々な状況が重なって、離婚を決意し、仕事上でも独立開業の道を選ぶことになりました。独立してやっていけるかしら…と不安で何度も夜中に目が覚めましたが、そのたびに『逃げるな』と自分を叱咤激励しました」
―布川さんは、住職・宮司などの宗教家を葬儀に派遣する「ハートフルライフ」を開業。この仕事を通じ、もっと社会に貢献したいという想いを強くしていきます。
「私自身、離婚をして娘が2人とも嫁いだため、独り身になりました。将来のお墓はどうなるんだろう、と切実に考えたこともあります。だからこそ、お墓がなくて不安な方の気持ちがよくわかるんです。
最初は『石材店さんやお寺さんが安価に入れる共同墓を作ってくれたらいいのに』と思っていました。でも、どこにも行き場のないお骨と出会い、それを預かる機会を数多くいただく中で、『自分の手で共同墓を造りたい』という気持ちが強くなっていきました」
「そして、ある時『いずれは共同墓を造りたい』という夢を、あるお寺の住職さんにお話したんです。そうしたところ、趣旨を汲んでくださって、共同墓を造るための土地を提供してくださると。そこからスノードロップの立ち上げが現実的になっていきました。周りの方々のご協力なくしては、今のスノードロップはなかったと思っています。今現在、埼玉県内で共同墓（合祀）を企画中、今年の９月頃には完成させたいと考えています」
―布川さんはNPOスノードロップ代表理事として、現在、樹木型の共同墓も計画中です。「樹木型墓地」とはどのような墓地なのでしょうか？
「スノードロップの樹木型墓地とは、墓地の中にシンボルとなる樹木を植えた共同墓のことです。共同墓を造りたいと思って、様々な寺院や墓地を見に行きました。その中でエンディングセンターの「桜葬」のことを知りました。本格的な樹木葬はある程度の広い土地や里山が必要ですが、樹木型墓地であれば、平坦な場所にも造ることができ、お参りもしやすい。目から鱗が落ちる思いでした」
―「もっと自分のことに時間を使ったら」と周りの人に言われながらも、布川さんは、共同墓を造るという目標に向かってまい進しています。そんな布川さんの姿に、協力を申し出る人の輪が広がっています。
「私が今までやってこられたのは、多くの皆さんのご協力があったから。それを思うと感謝の気持ちでいっぱいになります。そして、私自身、与えられた人生の試練から逃げなかったことを誇りに思っています。宿命は変わらないかもしれません。でも運命は変えられる。運命とは自分で切り開くものだと信じています」
「今の目標は、共同墓（合祀）をまず完成させること。この共同墓はご賛同いただく皆さまからの寄付金で建墓されます。エンディングセンターをはじめ、様々な活動が広がる中で、樹木葬に関しては私自身はまだまだひよっ子ですが、「スノードロップらしい樹木型墓地」を現実化させるために今奮闘中です。この「樹木型墓地」の売り上げの一部をスノードロップに寄附していただいて、その資金で次なる共同墓（合祀）を建てたいと考えています。お墓を買うお金がなくてお骨を押入れの天袋にいくつも置いてあるお宅がある。身寄りがなく不安を抱えて暮らす人がいる。少しでもそんな方々の力になれたらと思っています。 また、スノードロップでは、『スノードロップ広場』として、写経や太極拳などのイベントを通じ、皆様が交流できるお寺をご紹介しています。お寺は葬儀と法要を行うだけの場所ではなく、もっと身近な存在だということを伝えていきたいと思っています」
