─理想の現実の狭間で苦しんでいた栗原さん。そんな時、東京ディズニーシーなどでモルタル造形をされている職人さんと出会います。 「その人に出会って作品を見た瞬間、コレだ!ってピンとくるものがあったんです。モルタル造形なら、朽ち果てた壁や、レンガ、木の質感など、なんだって再現できるんです。可能性を強く感じ、すぐに弟子入りしました。でも、周囲には 『タイル屋なんだから、タイルを貼っていればいいのに』、『好きなことばかりして』というようなこともよく言われていました。その時は悔しかったですが、実績がなかったので…」。
![]() ─このことをきっかけとして、店舗リニューアルなどで実績を積み始めた栗原さん。しかし、まだ胸の中には「理想の空間ができていない」と思う気持ちがあったそう。 「ヨーロッパの古い壁などをモルタルで再現しながらも、どこかそれだけでは足りないような…硬すぎるんですよね、出来上がるものが。僕の理想とする空間というのは、もっと柔らかいものだったんです。そして思い至ったのが、僕の作る空間に花や植物たちを加えることでした。そして、植栽を空間に取り入れた時に自分の理想が見えた!という衝撃があったんです」。 ─ガーデニングを始めるきっかけは「花や植物が好きだった」という方が多いと思いますが、栗原さんの場合は「空間作り」という観点からガーデニングにたどり着いたとのこと。この発想の転換が、栗原さんの独創的でストーリーを感じるガーデンデザインにつながっているのではないでしょうか? 「そうですね…。確かに花ありきではなく、僕の作る壁と花がマッチした瞬間の美しさを追求していますね。空間が柔らかなものになることはもちろん、花が咲き、植物が育つことで空間そのものが歴史を刻んで変化していくことを楽しめることが植栽の魅力だと思います。また、壁や小屋などはなるべく『本物』を目指しています。つまり、ヨーロッパの古い家の壁というのは補修しては崩れ、それをまた補修して…ということを繰り返しています。そういった姿を再現していくんです。歴史を感じる壁と生きている花が一体化したときに、初めて空間にストーリーが生まれるのだと思っています」。
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